本日は、私がこのクリニックを開業した理由についてお話しさせてください。
保険診療には制度上の限界がある
私はこれまで総合病院などで診療を行ってきました。
そこで強く感じたのは、「保険診療には制度上の限界がある」ということでした。
もちろん事実として、
・保険治療で治る皮膚疾患は非常に多い
・最新のガイドラインに沿った標準治療を適切に行えば、多くは改善する
これは間違いありません。
しかし一方で、
・難治性(治りにくい状態)の症例
・何をしても改善しきらないケース
・制度や設備の制限で提供できない治療
が存在するのも事実でした。
病院によっては、行える治療の幅が狭まることもあります。
本来は選択肢があるのに提示できない――その状況にもどかしさを感じてきました。
例えば、アトピー性皮膚炎
近年、生物学的製剤の登場により、
アトピー性皮膚炎は「コントロールできる病気」になってきました。
かゆみは軽減し、湿疹も改善し、生活の質は大きく向上しています。
しかし、
・長年の炎症による色素沈着
・ごわつき
・肌質の低下
といった「元の肌に戻す」部分までは、保険治療だけでは十分でない場合があります。
お子さんの繰り返す湿疹も同様です。
「大きくなれば治りますよ」と言われ、
ステロイド外用だけが処方される。
それ自体は間違いではありません。
ステロイドは炎症を抑える、有効で安全性が確立された治療です。
ですが、
・なぜ繰り返すのか
・この塗り方で合っているのか
・他にできることはないのか
そこまで説明されないまま、不安を抱えている保護者の方も少なくありません。
湿疹は「待つ」だけではなく、
・正しい保湿
・悪化因子の見直し
・必要に応じた非ステロイド外用
によって、より安定させることができます。
「本当にこの治療で合っているのか」
「もっと良くする方法はないのか」
その疑問に、きちんと向き合える皮膚科でありたいと考えました。
ニキビ治療の現実
ニキビも、保険薬の進歩によって
「新しいニキビを作らせない治療」は可能になりました。
しかし、
・皮脂のテカリ
・ざらつき
・赤み
・ニキビ跡
といった肌質の問題までは、保険治療では十分に改善できないことがあります。
また、ガイドライン通りに治療しても改善しない重症例も存在します。
炎症を抑えるだけでなく、
肌全体の質感まで整える治療が必要な場合もあります。
治療法はあるのに、届かない現実
例えば、尋常性疣贅(ウイルス性いぼ)。
液体窒素療法を何度行っても改善しないケースがあります。
手術という選択肢もありますが、対応している医療機関が限られていることも少なくありません。
酒さ・赤ら顔も同様です。
ロゼックス外用だけでは十分でない方もいます。
酒さは、生活習慣やスキンケア、紫外線、血管反応などが複雑に関与します。
薬を出して終わりではなく、
・生活指導
・適切なスキンケア指導
・必要に応じた医療機器による治療
まで含めて提案できる環境が必要だと感じました。
女性医師として届けたい医療
皮膚の悩みは、とてもデリケートです。
・デリケートゾーンのできもの
・繰り返す腫れ
・「悪いものではない」と言われたがつらい症状
同じ性別の医師に相談したい、という声も多く聞いてきました。
安心して話せる場所。
小さな違和感も気軽に相談できる場所。
その環境をつくりたいと考えました。
おわりに
皮膚は、全身を覆う臓器です。
疾患も症状も悩みも、本当に多様です。
保険診療を大切にしながら、必要な場合には選択肢を広げる。
標準治療を誠実に行い、その上で、一人ひとりに合った提案をする。
植物園前ライラック皮膚科が、皆さまのお肌の相談窓口であり続けられるよう、努めてまいります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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植物園前ライラック皮膚科 院長 菅野莉英





